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【暗渠とは】担当した暗渠工事で得た知識と実際の施工記録を書き残す【排水】

建設

工事監督

工事管理員「暗渠(あんきょ)工事を担当することになったが、暗渠って何だ…?先輩怖いから聞きにくいし、ネットで調べるか…!」

そんな方に届いて欲しい記事です。
私が実際に暗渠工事に携わっている中で得たものを、記録としてここに残します。

専業が電気工事なのですが、縁あって暗渠工事に従事することになりました。本業の方から見たら甘い内容かもしれませんが、私のような初心者にとっては役立つ内容と思います。

目次

  • 暗渠の意味・由来と重要性
  • 暗渠管施工記録【材料調達から施工まで】

暗渠の意味・由来と重要性

暗渠例

暗渠工事とは何か?の前に、そもそも、暗渠(あんきょ)とはどのような意味なのか?を、確認しましょう。

暗渠とは【由来の確認】

まずはじめに、暗渠の定義を確認してみましょう。

暗渠とは、「地中」に埋設された河川・水路のことを指します。

「渠」という字を調べてみるとわかるのですが、その意味は

  • みぞ
  • 人口の水路

という意味があります。

さらに、「暗」という字がついていることから、

暗い水路=見えない水路(目につかないよう、意図的に隠されている)

という意味なんだな…と察することができますね。

参考:暗渠に対する明渠・開渠

暗渠に対し、明渠(めいきょ)や開渠(かいきょ)というものがあります。

こちらは暗渠の真逆で、

目で見える(土中などに隠されず、目に見える)

というものとなります。

地域によっては用水路などが走っている市町村もあるでしょうし、農業用水路などを利用している農家さんもいらっしゃることでしょう。

そのような、見えているものが開渠の例として挙げられますね。

暗渠の重要性

暗渠について(ついでに開渠も)定義を確認しましたので、次になぜそれを必要とするのかを考えてみましょう。

例えば下記の通り。

  • 濁った水を通すため、人目につかない方が望ましい
  • 排水する水が悪臭を放つため、隠した方が良い
  • 地表の水を吸収して流したいため
  • 暗渠の上に構造物を設けるため
  • 景観上の理由

街によっては川や水路が目に見えて走っている場所もあるでしょうが、暗渠は「見えない方が良い」場合に用いられることが大半です。

つまり、排水用途としての水路として使われることが大半です。

その排水が流れ着く排水ルートも街の中を丸見えだと最悪な気分ですよね。見た目もそうですが、臭いも相当酷そう。

という観点から、例えば生活排水においては暗渠化(下水道)にて人目につかないように工夫されています。

また、雨が降ればその水は地面に浸透して、やがては川から海へと流れて行きます。

重要:自然界の水(雨・雪)の処理

天候ばかりはどうしようもないものですが、それでも雨や雪解け水などの自然界からの水とは上手に付き合う必要があります。

少量の雨であれば、自然に浸透していずれは乾いていくことでしょう。

ですが、大雨の場合は河川が氾濫したり、地面の浸透が追いつかなくなったりして、自然に任せるだけでは処理しきれなくなります。

そうすると、以下のような場所ではかなり命取りであると言えるでしょう。

  • 農地
  • 人がたくさん集まる場所(商業施設、屋外競技場など)
  • 建設予定地
  • 自宅ほか、住宅近辺

自宅や自分が勤める会社の周りが、雨が降るたびに泥でぐちゃぐちゃな地表になったり、水で溢れかえっていると嫌ですよね。

そのようなことがないよう、排水設備をしっかりと設け、人工的に水を逃してあげることが必須となります。

側溝を作ったり、排水管を回したりしていると思います。
もちろん、その中には暗渠用の管も含まれているでしょう。

暗渠、排水工事は重要です

暗渠はその性質上、なかなか目にすることができない箇所でもあります。

なので尚更のこと、、もしあなたの身の回りに「排水状況がよろしくない」と思われる場所があれば、一度プロに相談した方が良いかもしれません。

台風のような緊急時に、排水設備が使えないとかなり致命的ですね。

工事現場の方であれば何らかのつてで専門業者をすぐに呼べるかもですが、一般家庭においてはそうは言えませんね。

下記の様なサービスがありますので、一度ご確認しておくことをおすすめします。



「たかが排水」と甘くみず、生活を安定させるためには重要なものと認識しておきましょう。

暗渠管施工記録【材料調達から施工まで】

暗渠管

では実際に、暗渠管の施工記録を記していきます。

なお、暗渠設計については別会社で行われており、当社ではその設計通りに施工をしたものです。

暗渠管の購入

暗渠管については、資材屋から調達します。

担当工事では、暗渠管のうち「ポリエチレン製」で「有孔管」が仕様として指定されていました。

例えば以下のようなものですね。

暗渠管路の素材としては、ポリエチレン含め、以下のようなものが代表的です。

  • 塩ビ管
  • ポリエチレンパイプ
  • コンクリート管
  • 陶管

素材によって管の強度や施工性が変わってきます。

設計される方であれば、埋設深さや地表の状態、埋設後の強度などをよく考慮のうえ、材料決定して下さいね。

工事側は仕様通りの製品を採用することで、材料調達時点から品質不良を起こさないよう努めることが重要です。

有孔管とは

読んで字の通りですが、孔(あな)が有る管です。

暗渠管をよく見ると、細かなあなが等間隔に開いています。
実際に手配した管の参考写真を貼ってみますね。

暗渠管の有孔管

上の写真の通り、管に穴が空いていることが分かります。この有孔部に水が入り込み、管内へ水を通過させているという訳ですね。

目の荒い石などは通過できないため管の中が詰まるようなことはなさそうです。

ですが目の細かい砂などはこの穴を通過してしまうでしょう。長い年月が経てば、いずれは詰まったりするのかもしれませんね。

新設工事のため、比較対象がなく、本記事ではその調査は割愛します。

そのためか、後述のフィルター材を使用する設計となっていました。

参考:無孔管もあります

読んで字の通りで、孔(あな)が無い管です。

担当工事では使用しませんでしたが、購入する際は有孔管・無孔管を間違えないよう注意しましょう。

不織布の購入

担当工事では、管路周辺に吸い出し防止材としてのある不織布(ふしょくふ)を巻きつけるものとなっていました。

不織布は、繊維を織らずに絡め合わせたもので、その表面は以下の様な見た目です。

暗渠工事用の不織布

ちょっと分かりにくくて、スミマセン。
ですが、イメージはつくかと。

なお、吸い出し防止材の効果としては、下記の通り。

  • 暗渠管まわりの砂利側に、地表から浸透してくる水に混じって土砂が流入してくることを防ぐ。

ここでも注意ですが、排水工事用マットとしては透水・遮水・吸い出し防止など、用途に合わせたものが様々あります。

適さないものを使用すると施工不良に直結するので、こちらも購入の場合は十分注意しましょう。

暗渠管の搬入

施工管理の資格をお持ちの方であれば、「施工経験記述問題」対策で工程管理について振り返ってみたことがあるのではないでしょうか。

資材の搬入についても綿密な打ち合わせが必要です。
当工事でも綿密に打ち合わせのうえ、関係者に迷惑がかからないよう搬入しました。

担当工事での暗渠管はポリエチレンで、人力で運搬可能なものでした。
とはいえ、トラック備え付けのクレーンで一気におろしてもらった方が早いですよね。

暗渠管に限らず、以下の点に注意ですね。

  • 資材の入荷日時
  • 資材運搬車両の台数
  • 他工事・工種の動向確認
  • 荷卸し箇所の決定
  • 荷卸し後の整理整頓・安全対策

担当工事でも抜かりなく実施しました。

大事なのは、荷卸し後の資材置き場を第三者にも明確にし、整理整頓に努めつつ、むやみに近寄らないよう区別することだと思います。

暗渠管布設のための掘削

実際に土中に埋設するにあたり、まずは掘削をします。

バックホー用のバケットとして、その名も「暗渠バケット」があることを初めて知りました。

別名、三角バケット。法勾配に合わせてサイズなどが様々あります。

このおかげでとても早く、綺麗に仕上げることができました。

なお、余談ですが、使用する重機の性能については現場の広さや掘削の規模などをよく考慮のうえ、必要十分なものを選定しましょう。

設計書の掘削幅、深さを守り、品質維持に努めましょう。

暗渠管の布設

購入した暗渠管を、不織布や砂利とともに掘削開口部へ入れ込みます。

  • 管周に砂利を巻き付け、不織布を被せる。

この繰り返しとなります。

施工中は、開口部への転落には十分注意が必要ですね。

担当工事ではポリエチレンパイプということもあり、管の自重はそれほどでもありませんが、開口部周辺を歩く際は注意するよう周知しておりました。

暗渠管の連結

暗渠管は専用部品によって連結・接続されます。

代表的なのは以下の通り

  • ソケット(直管)
  • エルボ(90度・45度)
  • チーズ(T分岐)
  • クロス(十字)
  • エンドキャップ(行き止まり)

例えばソケットは、以下の写真ようなものです。

暗渠間のソケット

Amazonなどで暗渠管 継手などで調べれば、イメージが湧くと思いますよ。
参考にどうぞ。

暗渠排水管 ネオドレーン用継手 (TチーズΦ75)
三井化学産資

これらを組み合わせ、設計書通りのルートで施工を進めます。

暗渠管の勾配

水は高い所から低い所に流れるものであり、暗渠管自身に設計された勾配をつける必要がありました。

掘削深さなどを微調整のうえ、管勾配を調整しつつ施工を続けました。

まず無いとは思いますが…勾配をつけなかったり逆にしてしまうと、のちのち大変なことになるため、しっかりと確認しましょう。

暗渠管の埋め戻し

暗渠管および不織布の施工がバッチリ完了したら、速やかに埋め戻しを行いましょう。

開口部がたくさんある現場は危険です。用が済んだら速やかに埋め戻しをしましょう。

暗渠管工事のまとめとポイント

これまでの流れを簡単に箇条書きにすると、

  • 暗渠管を買う
  • その他必要材料も買う(不織布・砂利材など)
  • 材料を現場に納める
  • 掘削する
  • 材料を使用し、暗渠施工を進める
  • 暗渠管布設後、埋め戻す

上記の通り。

施工のポイントとしては、

  • 暗渠管などの材料破損の防止
  • 暗渠管材料の連結・接続の管理
  • 掘削開口の幅や深さの管理
  • 暗渠管勾配の管理
  • 開口部への転落注意

などが挙げられるでしょう。

施工品質を高めることも大事ですが、安全第一でケガのないことがもっと大切ですね。

施工される皆さんは、十分注意してください。

この記録が、これから暗渠管工事を行う皆さんのお役に立てれば幸いです。