Shoji

現場代理人しかできない工事現場での究極の仕事【適正価格を維持する】

建設

当ブログにお越し下さり、誠に有難うございます。

「ゼロ災ブログ」と名を冠した当ブログですが、主に建設関係に関する内容で記事を更新しております。

本日は建設業に付き物の「現場代理人」に関する内容です。

現場代理人業務を遂行したことある方であればお分かりかと思いますが、難しい職務です。

今回はその内容を解説するとともに、「現場代理人しかできない究極の仕事」について、私の持論を軸に解説します。

記事執筆者のショウジ(@jijitan85)は、建設業界10年以上、現場代理人業務は7年程度経験しています。なお、主任技術者、監理技術者の経験も多数ありです。

本記事の内容

  • 現場代理人のイメージと仕事内容【信頼される現場代理人とは】
  • 現場代理人しかできない究極の仕事【適正価格で運営する】

現場代理人のイメージと仕事内容

現場代理人のイメージの確認

建設業界では現場代理人はなくてはならない存在ですが、そもそもみなさんは「現場代理人」にどのようなイメージを持っていますか?

よく聞く現場代理人のイメージ

  • 現場代理人は、仕事がわからないのに、偉そう
  • 現場代理人は、現場を知らないのに、偉そう
  • 現場代理人は、客(発注者)と下請に対する態度が全然違う
  • 現場代理人は、法令にうるさく、仕事が進まない

こんな感じの話を、わりかし聞きます。ネットで軽く検索してみても、似たような感想・イメージが出てきますね。

これについては、どれも正解で、どれも外れと言わざるを得ないと思っています。

というのも、やはり現場代理人の人柄で工事のしやすさや、進み方が全然異なるからです。

人柄は十人十色なため、毎回「優秀な」現場代理人に出会える保証はありません。

また、「発注者にとっての優秀」と「下請にとっての優秀」は若干異なるため、余計にややこしいのです。

  • 発注者は、安全第一かつトラブルのないよう、工事を進めて欲しいと思っている
  • 下請は、工事仕様に基づき適正な仕事を行い、適正な対価を支払ってもらいたいと思っている

例えば、上記の通り工事を終えることが、現場代理人の「優秀」の指針です。

評価者の立場によって評価は変動するため、間に挟まれて大変な立場でもあります。

ストレスも高いのか、急に失踪したり命を絶ったりする人もいるようです。自分もそうならないよう注意ですね。

現場代理人の仕事は、発注者と下請を上手く繋げて工事を回すこと

例えば発注者の無茶振りがあったりした場合、下請に頭を下げ、どうにかその要求を呑んでもらうよう説得する必要があります。

勿論、下請にとってそれはあまり面白い話ではありませんが、「請け負っている」都合、完全無視することができないのが実情だったりします。

そこでいかに下請に嫌な思いをさせないよう仕事をしてもらうか、それを決定できるのも「現場代理人の優秀さ」を決める指針でしょう。

「下請けに嫌な思いをさせない」とはつまり、それに見合う対価を適正に支払うことに尽きます。

「ありがとう」「助かった」などのお礼の言葉も勿論そうですが、タダ働きであれば面白くないですよね。

現場のお金を動かすのは、現場代理人の職務のひとつです。

主任技術者(監理技術者)は施工上の技術指導などはできますが、お金の権限はありません。それは現場代理人の仕事です。

主任技術者(監理技術者)が現場代理人を兼務することもできたりするので混同しがちですが、注意しましょう。

金の切れ目が縁の切れ目

ここで、冒頭で記載した現場代理人のイメージを再度紹介します。

  • 現場代理人は、仕事がわからないのに、偉そう
  • 現場代理人は、現場を知らないのに、偉そう
  • 現場代理人は、客(発注者)と下請に対する態度が全然違う
  • 現場代理人は、法令にうるさく、仕事が進まない

実はこの不満、工事金額を積めば全てチャラにできます。

あまり言葉がよくありませんが、「金をくれれば文句は言わない」という会社は多いのが事実。

なお、金にものを言わすやり方も度が過ぎると「札束で頰を叩いている」ような印象になりかねないため、「金を払ったんだからやれよ」という態度を絶対に表に出してはいけませんよ。

つまり、お金がちょっと潤う現場であれば、多少の無理要求は呑んでくれる可能性が高くなります。

ですが、お金がなければ、「金もないのになんでそんなことしなきゃいけないんだ?」という気持ちにさせてしまいますね。

誰しも、金にもならないことにタダ働きなんてしてられませんよね?「バイト代は出せないが、いいから働け」と言わたら、あなたは納得できますか?

なのである意味、「金の切れ目が、縁の切れ目」と言っても過言ではありません。

  • 発注者は元請業者の首を絞めすぎても、いいことはありません。
  • 元請業者は、一次下請の首を絞めすぎても、いいことはありません。
  • 一次下請は(以下略)

何でもかんでも「請負った金でやりきれ」というのは、本当にオススメしません。

現場代理人は自社のお金の権限があるので、適正工事価格の維持のため、戦う必要があります。

その件について、次の章でさらに深く解説します。

現場代理人しかできない究極の仕事【適正価格で運営する】

お金の比較

先ほどの内容をおさらいしますが、現場代理人しかできない仕事として、「適正価格の維持に努めること」をお話ししました。

それは自社の利益のみを追求するのではなく、お金が発生したものに対して適正価格を支払う責任を負うということです。それが、工事現場における現場代理人の【表向きの】究極かつ最重要事項です。

ポイント:お金が発生した原因を洗い出す

お金が発生するということは、例えば以下の通り。

  • 契約内容の遂行にて、進捗・出来高に準じ、その時点での価格を支払う(毎月の検収など)
  • 発注者の都合により、工事内容が変更・追加となる
  • 元請指示により失敗したものについての、遅延や作業手直しが発生する
  • 下請ミスによる訂正作業

現場代理人は上記のようなケースを解明し、必要に応じて関係個所に請求し、適正工事価格を都度確保する必要があります。

というのも、現場代理人が「何でもやらせていただきます」と言った発注者にとって都合のいい立場であれば、お金はなくなっていく一方です。このような現場代理人は、やばい。

現場代理人は、金のために戦うのが仕事

下請や職人さんたちは、「いいものを作ろう」という気持ちを持って現場に来ている者がほとんどです。

そのような人が満足に材料や工具が買えず、安全対策にもお金を回せず、会社が潤わない現場に当たってしまったら、やる気もなくなるのは当たり前の話です。

そのような下請を使っていくのも、上位下請会社や元請も辛いでしょう。

なので、お互いが不幸にならないためにも、「適正価格を維持する」ことを最優先とし、時には元請や発注者、たまに自社内の上司などとも戦う必要があります。

自社内の上司と戦うとは

工事現場といえど、結局はサラリーマンの集まりでしかなかったりします。

お金の権限はあるといえど、最終的にお金の決定は会社の方針で決まるところばかりではないでしょうか。

時には折り合いが合わず、発注者から満足なお金をふんだくることに失敗することもあるでしょう。

その時に、自社内の上司などに経緯を説明し、「やってくれたことに対してお金を支払う」よう説明できるのは現場代理人のみです。

もちろん上司も簡単に首を縦に振らないでしょうが、掛け合わないことにはお金の変更も発生しませんので、「嫌だな…」と思いつつも、やらなくてはなりません。

現場代理人は、現場代理人にしかできないことをやらないことが多い

現場を見る、客先と調整を行う、関連会社とうまくやっていくなどは現場代理人の仕事なのですが、それは究極的に言ってしまうと、「適正価格で工事が動いているかどうか見るため」です。

現場を見て、仕様と異なることはないのか、失敗を発見した場合は誰がやったのか、誰が手直しをするのかなどを逐次チェックする必要があります。

また、それを基に客先や協力会社と照合させつつ、工事が破綻しないようにすることが重要です。

このお金に関することが現場代理人の資質と言っても過言ではないでしょう。

なので現場代理人を任命されたら、お金にはルーズにならず、適正価格(下請を泣かせない価格)は最低限死守するよう立ち回れるよう計画しましょう。

施工の技術的なことについては、冒頭の通り主任技術者(監理技術者)の指導が別途あります。なお、兼務しているところもあるので、その際は現場代理人さんが何足ものわらじを履き、頑張る他ありません。

適正価格を維持するためのポイント

  • 工程会議は、議事録を取る
  • 品質に関わることなどは、客先立会いにて承認をもらう
  • 材料検収、機器据付作業など、可能な限り客先立会いを要請する
  • 契約の変更に関する内容については、別途議事録を残し、客先担当と双方でお金に関する内容を打ち合わせる
  • 契約変更の前にどうしても仕事を進めなくてはならない場合、最低限、後から清算して頂ける旨を記載した念書を取り交わす

例えば上記の通り。現場代理人の身を守るのは、現場代理人しかできません。

そのためにできることは、「記録を残すこと」です。

その記録が、いつかあなたの身を助けてくれるかもしれませんので、最低限、上記ポイントは守ることをお勧めします。

【もう一つの資質】現場代理人としての仕事

今までお金のこと中心に書いてきましたが、実は、お金以外にも大切なことはたくさんあります。

その中で、私の経験上最も大切なことは「現場関係者全員に対する誠実さ」に尽きると思います。

  • 発注者や下請を、金だけの付き合いと思わない
  • やってもらったことに対する感謝を忘れない
  • 全員の名前を覚える
  • 「おはよう」「ありがとう」「お疲れ様」などの声掛けを率先して行う
  • 困ったことに対して、親身に相談に乗る
  • 様々な困りごとに対応できるよう、知識技術を伸ばす
  • たまに、同じ休憩所で休んだり、雑談の輪に入って談笑する
  • たまに、一緒に食事する(接待は受けない)
  • たまに、職人さんと同じ目線で、作業を手伝う(怪我をしない程度の範囲で)
  • 整理整頓、清掃を一緒に行う
  • トイレは常に清潔に

これらを通していく中で、自社とは違った目線だったり、その作業班独自のカラーが見えてきたりします。

その方々が楽しく、気持ちよく仕事をしてもらえるにはどうすればいいのか、一緒につき合う時間が増えるほどに、わかってきます。

世の中どんなこともそうですが、相手から何かを貰いたいのであれば、自らも与える(Give)スタンスでいることが超重要です。

あなたのGiveは、必ず下請けや職人さんに伝わりますので、安心してください。

現場代理人は辛い立場ですが、あなたが現場のためにGiveできる人だと認識された時、あなたが本当に困っている時に、必ず力になってくれるはずです。

現場代理人のもう一つの仕事とは、発注者や元請、下請に、「信頼・安心して工事を任せられる」と思われる人になるということです。

これはお金勘定だけでは生まれないものです。

人は、最終的には感情で判断します。

たまにいますが、「金払ってんだからやれ」というスタンスの人もいますが、そんな人を使い捨てるような人が下請を助けようとしたり、皆から支持さるとは思いません。

高い金を積んでも、「あんたとは働きたくない」と言われたら本末転倒です。

特に頑固な職人さんは義理と人情を重んじる方が多く、金だけで動くとは限らないという人もいます。

逆に、そのような方が働きやすい職場にフルコミットする現場代理人の方が、人気があるかもしれません。

そのあたりのさじ加減は難しく、つき合う関係者のカラーに合わせてバランス調整が大事となってきます。下請の顔色ばかり伺って何も言えない現場代理人は、それはそれで問題ありですからね。

現場代理人は、そんな個性的な人たちを丸く収める技量を試されます。「この現場代理人のいうことなら…まあ仕方ないか」と思ってくれる人が一人でもいたら、だいぶ働きやすいですよ。信頼は本当に重要です。

信頼は積み上げるのにたくさんの時間を要しますが、壊れるのは一瞬です。

なりたい現場代理人像をイメージしよう

ここまで様々なことを語ってきましたが、最終的にどうなりたいかを決めるのは、ここを見ていただいた方次第となります。

もちろん、ここに私が書いた内容が全く参考にならなかったという方もいらっしゃるでしょう。その際は、誠に申し訳ございません。

ですが、私自身はやはり工事を充実させ、安心安全・楽しくするためには、先立つ物(お金)も必要ですし、現場関係者が笑顔で働ける環境は重要だと思っています。

私自身もまだまだ修行中の身なので、数年後にはこの持論も変わっているかもしれません。その際は、書き換えます

どちらにせよ、現場の中で現場代理人がブレると皆が困惑するため、現場代理人を任命された方は、使命感を持って職務を全うしましょう。

関係者から愛され、頼りに朝れる現場代理人が増えていくことを願います。

そのためには、現場に甘んじず、戦い続けましょう。