新型コロナウイルスで建設現場を一時中止する場合の対応【受注者の責めとはなりません】
新型コロナウイルス感染症の恐ろしさは、建設現場にも大きな打撃を与えています。
私自身も建設現場に従事しておりますが、特に安全衛生面については、これまで以上に厳しくなりました。
そのような中でも、建設現場・工事現場をストップせざるを得ないリスクはゼロではありません。
ただし、
- 関係者が新型コロナウイルスに感染して、工事を中断せざるを得ない。
- 新型コロナウイルスに感染予防のため、工事を中断する。
上記の2つでは、意味合いがかなり異なりますね。
結局は会社の方針次第となってしましますが、最低限、発注者・受注者が協議のうえ双方納得できるのであれば、工事を止めることはできるということを覚えておいて損はありません。
ここでは、その材料となるであろう資料を紹介します。
新型コロナウイルスで建設現場を一時中止する場合の対応【受注者の責めとはなりません】
受注者が最も恐れていることとしては、工事が止まって工程が遅れ、工事が完成しないことではないでしょうか。
工事の最終目標は、目的のものを完成させること
当たり前ですが、建設工事というものは、目的のものを完成させるために運営されています。
そしてこれも当たり前のことですが、建設工事をストップすれば、その完成が遅れるのは必至です。
ただし、新型コロナウイルスに関与する事態としては、次に紹介する内容の通り謳われています。
国土交通省の文章による見解
国土交通省より、2020年4月7日付で新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言を踏まえた工事及び業務の対応についての文章が公表されています。
その中に記載されている文章をまとめると、下記の通り。
- 緊急事態措置を実施すべき区域における工事又は測量・調査・設計等の業務については、対象地域に係る都道府県知事からの要請を踏まえつつ、今後の対応について受発注者による協議を行う。
- この協議の結果、受注者から工事等の一時中止や工期又は履行期間の延長の希望がある場合には、受注者の責めに帰すことができないものとして、契約書に基づき工事等の一時中止や設計図書等の変更を行う。
- なお、一時中止措置等行った場合においては、契約書の規定に基づき、必要に応じて請負代金額若しくは業務委託料の変更又は工期若しくは履行期間の延長を行うなど、適切に対応する。
- 一時中止の期間は、対象地域における新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況を踏まえ、適切に設定する。
ということで、新型コロナウイルス感染症に関する工事の一時中止については、記載の通り「受注者の責めに帰すことができない」ものとして取り扱われます。
一時中止の権限は、発注者によります
とはいえ、工事を止めていいものかどうか、最終判断は発注者の考えによるところが大きいと考えます。
遅らせることができないことについては重々承知のうえ、あえていいますが、受注者だって遅らせたくて工事の一時中断を申し入れているわけではないのです。
新型コロナウイルス感染症防止については非常にセンシティブな内容かつ、判断を誤れば建設工事現場が感染源となりうる可能性もあるため、よく検討していただきたいところです。
改めていいますが、
- 関係者が新型コロナウイルスに感染して、工事を中断せざるを得ない。
- 新型コロナウイルスに感染予防のため、工事を中断する。
上記の2つでは、意味合いがかなり異なります。
新型コロナウイルスに対する企業の振る舞いを、人は忘れません
緊急事態宣言が発令されている現在、企業の振る舞いに人々は敏感になっています。
負の連鎖は止まらない
受注者と発注者が協議のうえ、新型コロナウイルスに関する建設工事の一時中断がNGとなれば、特に受注者側にとっては、
と思う人もゼロではないと思います。
元請は工事を止めることができないため、下請会社を休ませることができなくなります。
そうすると下請会社の方々も、
と思うことでしょう。
こうして、新型コロナウイルスを起因とする、建設工事現場の負の連鎖が始まります。
家族の気持ちを聞いたことがありますか?
建設現場は、直接仕事に関わる人だけのものではありません。
- 例えば、建設現場に出向する監督や職人さんを見送る、その家族はどういう気持ちか、考えたことがありますか?
間接的に建設現場・会社に関わる方々も、広い意味では建設現場の関係者だと私は考えます。
不安に思う家族を「仕事だから」と諭し、現場に向かう人も少なくないでしょう。
企業の振る舞いを、人は忘れません
直接・間接かかわらず、工事現場に関わる人にとっては、生きていくために止む無く工事の方針に従うこともやぶさかではないかもしれません。
しかし、全くの第三者は非常に厳しい目で企業をみています。
そして、その時企業がとった行動や判断を、企業が思うよりずっと鋭い目線で監視しています。
清水建設とコロナ感染者の例
私が編集長の「アクセスジャーナル」で報じた、「清水建設」社員がコロナ感染で社員寮で孤独死していた件、いまごろ大手マスコミ報じるも、世田谷区長の陳謝に関してのみで、社名も同社追及の内容もなし。https://t.co/MsHjllTL0o
— 山岡俊介 (@yama03024) 2020年4月28日
事が起きてしまってからでは何もかもが遅すぎます。
せめて、起きてしまった場合は誠実に対応するべきでしょう。
建設工事とは、ものが完成すれば、それだけで良いのでしょうか?
できる事なら、そこで働く人たち全員が、「いいもの作れたね」と笑顔で去っていける物を、後世まで継いで行きたくありませんか?
建設現場をどうするべきか、協議・決定できるのは受注者(元請)と発注者のみです。
すべての工事を中止にしろとはいう気はありませんが、金や工期などの目先の利益だけで判断せず、長期目線で冷静な対応が必要であると考えます。
あなたの建設現場で新型コロナウイルスによる感染症被害が出ないことを祈りつつ、本記事を終了します。