【消防法】ガソリンの性質と火災予防法・消火方法まとめ【危険物】
先日、京都アニメーションでガソリンによる放火事件がありました。
【「爆燃現象」で急速拡大か】
京都アニメーションのスタジオ火災で身柄を確保された男は、1階出入り口付近でガソリンをまいて火を付けたとみられます。専門家は、揮発性のガソリンが室内に一気に充満し、爆発的に可燃物へ燃え広がった可能性を指摘します。
詳しくは⇒https://t.co/xkdn7jYxJO pic.twitter.com/E83mbUln81
— 時事ドットコム(時事通信ニュース) (@jijicom) July 19, 2019
※事件の内容については、ここではあえて触れません。詳細を知りたい方は、上記ツイート記事をご確認下さい。
実はつい先日、同業者(建設業)のガソリン火災の事故があったばかりで、改めてガソリンの恐ろしさに気付かされました。
ガソリンによる火災は決して他人事ではなく、建設現場では機械等の燃料としてガソリンの使用は欠かせません。取り扱いを間違えれば同じような火災事故が生まれるのでは?と心配になりました。
ここでは自戒の意味も込め、ガソリンの知識についてまとめ解説します。また、今後ガソリンを取扱う方のお役に立てればという思いでも記事にしております。
建設現場のみならず、様々な業種でガソリンを扱うと思いますので、ぜひご覧になって下さい。
本記事で分かること
- ガソリンの性質
- ガソリンと危険物の種類
- ガソリン火災と消火方法
- ガソリン火災を引き起こさないために
ガソリンの性質と消防法
「危険物」という言葉を聞いたことありますか?その名の通り、生物をはじめ、あらゆるものに危険を及ぼす可能性を秘めた物質のことを指します。
ガソリンも消防法上、この危険物に相当します。では、その性質はどのようなものなのでしょうか。確認してみましょう。
危険物の区分によるガソリンの性質
後ほど解説しますが、ガソリンは消防法上、危険物第四類 引火性液体 第1石油類(非水溶性液体)
の対象物となります。
それはどのような性質を持つかというと、
ガソリンの性質
比重 | 0.65〜0.8 |
引火点(℃) | -40 |
発火点(℃) | 300 |
燃焼範囲(%) | 1.4〜7.6 |
蒸気比重 | 3〜4 |
水溶性の有無 | 無 |
毒性 | – |
ざっと、上記の通りです。
引火点を見てみますと、なんと-40度
。つまり、人間がほぼ活動できない所でも火の元があれば引火することがわかります。
そして恐ろしいことに、-40度
でも気化するという点も見過ごせません(情報元:総務省消防庁サイトより)
※気化する恐ろしさについては後で解説します。
また、無色透明であり(自動車用ガソリンは、人工的に着色されています)独特の臭いがあります。容器から出してしまうと、視覚だけでは、そこにガソリンがあるのかどうか分からない可能性大ですね。
そもそも、危険物に相当しているため、取扱には制約があります。具体的には、後述します。
以上から簡単にまとめると、
- 消防法上の危険物に相当する
- 危険物のため、取扱に制限がある
- 低温でも引火しやすい(-40℃以上)
- 低温でも気化する恐れあり(-40℃以上)
- 無色透明(自動車用ガソリンは人工的に着色)
- 独特臭いがある
となります。
ガソリンと危険物の種類
先ほど、ガソリンが危険物に相当すると書きましたが、ここではさらに詳細に、危険物としてのガソリンの詳細を解説します。
危険物の定義
そもそも危険物は、例えば、
- 消防法
- 毒物及び劇物取締法
- 高圧ガス保安法
などで定義されています。
今回ガソリンに限っては、最も関連する消防法に基づき話を進めていきます。
消防法における危険物の分類
消防法における危険物とは、消防法別表1の通り、六種類に分類されてます。
- 第一類 酸化性個体
- 第二類 可燃性個体
- 第三類 自然発火性物質及び禁水性物質
- 第四類 引火性液体
- 第五類 自己反応性物質
- 第六類 酸化性液体
この別表1を含め、消防法についてより詳しく知りたい方は、下記リンクからどうぞ。
消防法におけるガソリンの分類
上記の消防法別表1の分類から、ガソリンは 第四類 引火性液体 第1石油類(非水溶性液体)に相当します。
引火性液体とは、読んで字の如く、発火を招く液体です。
もう少し詳しく説明すると、引火性液体とは
- 1気圧20℃で液体である。
- 消防法による引火点測定試験等で、さらに詳細に区分される。
- 水に溶けるかどうかでさらに区分される(非水溶性液体・水溶性液体)
などの性質があります。詳細については、ここでは割愛します。先刻紹介した、リンク先をご参照下さい。
指定数量とガソリン
さらに消防法では、「指定数量」にて危険物の数量を制限しています。
指定数量とは、簡単に言うと消防法の規制を受ける危険物の数量のことを指します。
ガソリンなどの危険物は、量が多くなるほどに万が一の場合の被害も大きくなります。そのため、危険物の種類、数量、そして期間や保管や貯蔵の場所・その方法等、指定数量に対して何倍(または、何分の1か)で扱い方が異なります。
ガソリンの指定数量は200リットルです。
よって、指定数量の200リットルに対して、ご自身が今何リットル所有しているのか。ここを常に確認する必要があります。確認後は、必要に応じて適正な手続きを進めて下さい。
ガソリンの補給と保管方法
ガソリンは危険物なので、補給・保管方法も注意が必要です。
- 消防法で、ガソリンは危険物取扱者が補給・保管を行う。
- ただし、自動車のみ、セルフ給油可能
- ガソリンは携行缶等で、無資格者でも一定数量を運搬・保管可能
- ポリタンクはガソリン保管には不適切
事故が起きると様々な方面に迷惑がかかるため、最低限、上記方法は厳守しましょう。
ガソリン火災と消火方法
適正に管理していても、ガソリン火災は起きてしまう可能性があります。ここでは、ガソリン火災が起こりえるケースと、正しい消火方法について解説します。
ガソリン火災が起きてしまうケース
これまでの内容を踏まえて、火災に繋がるであろうガソリンの性質をもう一度確認しましょう。
- 低温でも引火しやすい(-40℃以上)
- 低温でも気化する恐れあり(-40℃以上)
- 無色透明(自動車用ガソリンは人工的に着色)
- 独特臭いがある
- 非水溶性液体(水と混ざらない)
となります。これらのことから、以下のようなケースが考えられます。
液体のガソリンそのものに、引火する
ガソリンでは常温(1気圧20℃)で液体です。ガソリンは、-40℃以上で火で引火するため、人間が活動する範囲では、ガソリンに直接火の元が近づくと確実に引火します。
気化したガソリンに、引火する
ガソリンは、-40℃以上で火で気化します。ガソリン容器のキャップが開いていた等で放置していた場合、液体ガソリンが気化し、容器外に漏れ出ていくことと同等となります。
もちろん、ガソリン保管容器の温度が高まれば、気化するスピードは早くなります。
ガソリン保管容器が密封されていても、容器内温度が高まれば、口を開けた瞬間に内部気化したガソリンが勢いよく容器外に出て行きます。
気化しても引火点は変わらないため、気化したガソリンが充満してしまうと、どんなに小さな火種でも引火します。また、気化しているため空気中のガソリンが及んだ範囲全体に引火するでしょう。このため、マッチやライターだけではなく、静電気にも特に注意が必要です(静電気の火花が引火の元となる)
特に、気化するとガソリンは全く見えなくなるため、どこまで充満してしまったのかは、目ではわかりません。ガソリンの保管は要注意です。
セルフのガソリンスタンドなんかで、静電気除去シートに必ず触らなくてはいけない理由、これでわかりますよね?
ガソリン火災の消火方法
大事なことを言います。火の消火=水という思い込みは、まず捨てて下さい。
燃焼する元がなにかで、適正な消火方法が決まります。ここでは、ガソリン火災について解説します。
消火器を使う
ガソリン火災は、消火器が有効です。厳密には燃焼する元と消火器の相性があったりします。ですが、大抵は万能なABC粉末タイプが常備されていると思いますので、心配ないかと。職場などには必ず備えられているかと思います。
消火器の内容物は、主に火の元を窒息させる(燃焼の供給源、酸素を絶つ)ための成分が入っています。これで燃焼のもとであるガソリンごと処理します。
水消火がNGな理由
先述の通り、ガソリンは非水溶性であり、水と混ざらない性質を持ちます。そのため、水をかけると、水の流れにガソリンが乗ってしまい、一緒に流れる=火災規模が広がるというリスクが高まります。
そのため、水は適さないのです。必ず、消火器を使って下さい。
消火器でも完全鎮火が望めない場合
119で消防車を手配しましょう。消火しつつ、大声で助けを呼び、消防車を手配して下さい。もしあなたが一人なら、規模にもよりますが消火は諦め、とにかく消防車を呼んで下さい。
ガソリン火災を引き起こさないために
これまでの点を踏まえ、下記の通りまとめます。
- 引火温度および気化温度が低い(-40℃〜)ため、高温箇所での保管を避ける
- 保管数量を極力減らす。極力、ストックとして常備保管しない。
- ガソリン保管容器は、ガソリンに適合した物を用いる
- 「指定数量」を参考に、危険物取扱者の選定や、消防への申請を行う
- 常温でも気化するため、使用後はキャップや蓋を閉じ保管する
- 万が一の災害時は、水消火ではなく、消火器を使用する
- くわえ煙草など火の元が近い状態でガソリンを取扱わない
特に最後の内容は、建設現場などではありえるケースかと思いますのでご注意を。
以上を参考に、危険物、火の元に注意のうえ、正しくガソリンを管理し、災害を防止しましょう。