施工体制台帳をなぜ作成するのか、なぜ必要なのか。その明確な理由
施工体制台帳を作成しないといけない理由、実はよくわからない人もいるかもしれません。昔の私もそうでした。
「ただ上司からの指示で作れと言われたから…」と、しぶしぶ作成している方、いらっしゃいませんか?昔の私もそうでした。
理解しないで作成するだけと、作成する理由がわかったうえで作成するのでは、記載内容の理解度はもちろん、誤字や解釈の誤認も少なくなります。よって、書類精度が高まることでしょう。
ここでは、「施工知性台帳をなぜ作成するのか」と「施工体制台帳がなぜ必要なのか」について、解説します。
この記事の内容
- 施工体制台帳を作成する理由
- 施工体制台帳がなぜ必要なのか
- 施工体制台帳に不備があった場合どうなるか
施工体制台帳をなぜ作成するのか
そもそもの前提として、建設業法において、施工体制台帳の作成指示が明記されています。
余談ですが、元請は施工体制台帳を作成する工事であることを、すべての下請け通知する義務があります。
元請は必ずこのような書面で通知しましょう。そして、1次下請さんは、必ず請求しましょう。
建設業法に明記された施工体制台帳の作成指示
ちょっと堅苦しいかもですが、建設業法 第二十四条の七 第一項に、施工体制台帳について記載がありますので、引用してみます。
特定建設業者は、発注者から直接建設工事を請け負つた場合において、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が政令で定める金額以上になるときは、建設工事の適正な施工を確保するため、国土交通省令で定めるところにより、当該建設工事について、下請負人の商号又は名称、当該下請負人に係る建設工事の内容及び工期その他の国土交通省令で定める事項を記載した施工体制台帳を作成し、工事現場ごとに備え置かなければならない。
※建設業法 第二十四条の七 第一項 より引用
この通りとなります。ここにある「下請け契約の請負代金の額」の「政令で定める金額以上」とは、下請契約の請負代金の合計が4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)となります。
ただし、公共工事の場合は金額問わず必須となります。この点は、過去に記事をまとめましたので、ご確認下さい。
建設業法で定められた施工体制台帳の作成条件【工事金額・公共工事】
施工体制台帳をご存知でしょうか?適正な施工を確保するため、必要に応じて工事現場で保管される、建設業に関わる書類のことです。建設業に関わることであるため、当然、建設業法にもその旨の記載があります。ご存知でしたか?ここでは建設業法と施工体制台帳の関係を解説します。
施工体制台帳の放棄は法令違反です
法令で決められた以上、作成しないといけません。以上が作成する理由です。
ゼネコン等元請が責任を持って、しっかりと施工体制台帳を管理する必要があります。
なので、1次下請以下は書類でいじめられると感じることがあるかもしれません。実はそうではなく、あくまで法令の範囲で任務をこなしているだけです。
むしろ、元請の指示に従わず、書類を提出しない場合、法令違反に加担することになるので注意です。
施工体制台帳がなぜ必要なのか
この書類を提出することで、あなたの会社は法令で保護されることとなります。
施工体制台帳にて承認された会社は保護される
施工体制台帳とは、そもそも、その工事現場に入所する会社に関する情報を網羅した書類です。
施工体制台帳の書類内容を改めて確認してみて下さい。なお、必要内容がわからない方は、こちらの記事に必要内容についてまとめていますので、ご参照ください。
建設業法施行規則による、施工体制台帳の構成内容・必要書類について
施工体制台帳についていまいちわからないという方のために、建設業法に関連した「建設業法施行規則」に記載されている施工体制台帳の内容・必要書類について解説します。最新版ひな形(テンプレート)のある場所も紹介しております。規則に準じた内容を網羅し、適切な書類を準備しましょう。
※施工体制台帳の内容は、建設業法施行規則に明記されています。
この書類を提出・受理されることで、元請に、あなたの会社がその工事現場で作業できることを承認します。
なぜ承認行為が必要というと、書類で各種証明を明確にしないと、万が一の事故などで元請・下請双方が損をするからです。
- 工事を承認された会社であることの証明
- 工事に関する内容の証明(現場担当者、工期、工種など)
- 会社に関する内容の証明(建設業許可、施工体系など)
上記3点が明確だと、事故が起きても保険となります。具体的には、以下の通りです。
工事を承認された会社であることの証明
施工体制台帳に記載された会社以外が、工事現場で怪我をするとどうなるか。
労基署や警察により現場検証を行われるとともに、書類内容を確認されます。
その際、施工体制台帳に記載されていない会社であると判明すると、とても厄介です。
契約体制をはじめ、工事現場の健全性が根底から疑われます。
工事に関する内容の証明(現場担当者、工期、工種など)
現場担当者(主任技術者等)が、書類記載上の人と、実際に管理している人が別々だと、安全品質に関わるトラブルが発生したとき、圧倒的に不利な状況になります。
明記された工期とは異なる期間での工事は、契約範囲外となり、安全品質に関わるトラブルが発生したとき、やはり圧倒的に不利な状況になります。
工種については、「基礎工事」をやるという約束で現場入りしているにもかかわらず、契約無視で「範囲外の仮設工事」を指示することはできないという決まりが出来上がります。
たまに口約束や口頭指示で余計なことをやらせる元請もいます。契約範囲外ですので本来は受け入れる必要がありませんが、実際は難しいですね。
契約外について安全品質に関わるトラブルが発生してしまうと、面倒臭いです。責任の区分を明確にするため、口頭指示は受け入れず、必ず書面で指示を出してもらってください。
会社に関する内容の証明(建設業許可、施工体系など)
あなたの会社がどのような建設業許可を得ているのか、どの会社の下についているのか、明確にする必要があります(施工体系)
特に施工体系については、安全品質に関するトラブルが発生した場合、「誰の指示で誰が動き、そうなったか」が論点となります。
正しい流れは、「元請→1次下請→2次下請け→…」です。いくら元請でも、「元請→2次下請」のように、飛び越えて指示はできません。
この流れで現場が稼働しているかどうか、とても重要です。
施工体制台帳の作成理由、必要理由
これまでに記載した通りですが、もう少し追記します。
施工体制台帳で工事現場が保護される
「安全品質について何か起きたとき」を考えてばかりだとネガティブになりそうですが、元請としてはここが一番重要なポイントです。
もちろん1次下請以下も「何か起きたとき」について考える必要はあると思いますが、工事現場で起きたすべての事故は、最終的に元請が責任を取り、保証することとなります。
なので、1次下請以下よりも特に厳しくチェックせざるを得ません。
正しい運営でやむを得ず起きてしまった事故、管理も何もない場合に起きてしまった事故、最終的には罰金・禁固刑どうなるかわかりませんが、重さが全く違ってきます。
そして「正しい工事現場の運営」を証明するものは、この施工体制台帳という「書類」となります。
施工体制台帳を正しく記入し、トラブルを回避しよう
「何か起きたとき、元請が責任をとる」と聞くと、「責任は元請がとるし、うちらは好きにやらせてもらうぜ」という1次以下の下請さんも、いるかもしれません。
当然ですが、元請も黙っていません。書類に少しでも不備があり、実態と異なる点は追及し、損害賠償を請求するケースもあるでしょう
つまり、元請・下請お互いの保身にはどうしても書類は必要となります。しっかり作成しましょう
施工体制台帳に変更が発生したら
人員追加等、社長交代、建設業許可期限の変更等、発生の都度すぐに訂正しましょう。
変更しないと、書類の不備とみられても仕方ありません。
施工体制台帳の作成理由、必要理由
改めて確認しましょう。
- 建設業法で施工体制台帳の作成が明記されている
- 工事現場が正しく運営されていることの証明書類となる
- 万が一のトラブル発生時、会社を、あなたを守ってくれる最後の砦
以上の通りです。
面倒だとおもわず、自分のため、会社のためという視点で作成をお願い致します。